第13回 菌学シンポジウム報告

「21世紀の科学、生物学、菌学教育」

日時: 1998年12月12日(土)12:30-16:30
場所: 東京農業大学グリーンアカデミーホール

プログラム(敬称略)
1) 大学の教育現場から
 小川 吉夫 (日本大学薬学部生物学科 助教授)
2) 中学校「理科」における菌類・細菌類の学習について  白石 亨 (江東区立砂町中学校 理科教諭)
3) 幼菌の会とアマチュアの活動について―自分たちの研究環境づくり  森本 繁雄 (幼菌の会会長、京都市立下鳥羽小学校 教諭)
4)
-大学からみた理科教育―科学技術と社会(STS)の文脈からの考察  中島 秀人 (東京工業大学大学院 社会理工学研究科 助教授)
5)
総合討論

 (総合司会)安藤勝彦 (協和醗酵工業(株)東京研究所)

 「21世紀の科学、生物学、菌学教育」と題し、各方面の方々をお招きし、それぞれの立場で、ご経験にもとづき、現在の科学、生物学の教育は多くの問題点について以下のような持論を展開していただき、最後に1時間半に及ぶ総合討論を行いました。大きなタイトルとこの種の始めての試みに関わらず、演者の先生方の熱心なご講演と会場の反応の良さから、最後の総合討論では時間が足りなくなってしまい、尻切れトンボの感は拭えませんが、参加者の皆様にはご満足いただけたものと自画自賛しております。
  小川先生は、大学は大学教養課程の授業を通し、学生が自然への興味を抱いていること、自然史教育とエリート養成と即戦力養成のジレンマ、分類学と「実際に見る」ことの重要性などを紹介した。

 白石先生は中学校理科教育で、アンケートを通じ、理科離れはないが、科学クラブなどの衰退低迷していることを紹介し、興味関心、実験観察、授業の工夫、特に微生物に関しては体験的な学習が重要であることを述べた。

 森本先生はアマチュアのグループ「幼菌の会」を主催してきた経験から、興味関心が重要だが、今後蛸壺化現象にならないためにも全国ネットなど新しい展開を心がけたいと紹介、教育における興味関心、場の設定、基礎能力と知識、情報伝達と刺激などが重要とのこと。

 中島先生は、詰め込み教育ではなく考え方が重要という、現在の一般的な教育の考え方に真っ向から反対し、理科教育の問題点は理科の知識教育をしなくなった点にあると熱弁を振るった。興味深いことに彼の攻撃的な主張は聴衆の共感を誘ったようであった。

 その後の総合討論では、小中学校および高校の抱えている理科教育の問題点、時間の少なさなどが会場からの悲痛な叫びとともに浮き彫りにされ、微生物(菌学)に関しては、理解できるような時期に教えるべきとの考えが示された。