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一般社団法人 日本菌学会 - The Mycological Society of Japan

会長挨拶

会長に再選されて

一般社団法人日本菌学会会長 細矢 剛
一般社団法人日本菌学会 会長
細矢 剛

このたび会長に再選されました国立科学博物館の細矢です.前期に引き続き,着任にあたって,一言ご挨拶させていただきます.

前2年は,2回とも学会は完全オンラインとなりました.学会の事業の中で最も重要な大会が対面の形で開催されなかったのは大変残念なことではありましたが,これを中止とせず,急遽オンラインで実施することとした初年度は,運営を外注せずにすべて自力で行うことに大変なご苦労があったことと思います.しかし,初年度は,この経験に多くのことを学ぶことができました.また,多くの業務が(世の中の流れもあって),オンラインで実施可能であることも学びました.そして,次年度はこの経験をもとにして,事業の特性に応じて,より適したオンラインシステムを峻別することにより(大会参加費徴収に関するPEATIX,ポスター発表に関するLincBiz,発表におけるYouTubeの利用,リアルタイムのセッションにおけるZoomの利用など),オンラインでの開催をより効率的,効果的に開催する形に変化させ,大変よいオンライン学会大会を開催することができたと思います.

執行部においては,以前,対面で実施していた理事会の時間を減らす代わりに,Zoomによるオンラインの「理事打ち合わせ会」をほぼ毎月開催することによって,コミュニケーションを確保し,組織としての意思決定は,適宜対面・リモート・メールで行うことによって,従前の意思決定の方式を維持しつつ,十分な議論もできるように配慮しました.また,Zoomを活用した「サテライトセミナー」を開催し,国際的な研究発表をより身近なものにできるようにしました.

組織運営においては,法人としての事業の継続性,共同作業の効率化の観点から,クラウドストレージシステム(BOX)を導入し,資料の共有・保管がしっかり行えるようにインフラを整備しました.

Mycoscienceは2021年度にJ-Stageに移行して完全オープンアクセスが実現されましたが,過去資産の活用を図るため,過去のデータのすべてをElsevier社より回収し,Springer社刊行時代のものも含めた完全公開にむけての準備を進めています.国際的な知名度という点では,国際的な事業を展開している出版社と提携できないのはデメリットではあります.しかし,それを補い,国際的地位を向上するため,国際的な書誌データベースであるPubmed Central (PMC)への収載を実現しました.さらに,今後のデータ公表のあり方に対応するべく,データストレージであるJ-Stage Dataとの連携も検討中です.

さて,上に述べた中には,様々な目新しい言葉が並んでいると感じられた方も多いことと思います.日本では2020年に本格化した新型コロナ感染症(COVID-19)による社会の変化で,多くの社会的な風習が変わりました.リモートワークはもはや一般化し,もとの社会に「戻る」ことはないと思います.新しい商業システムやビジネスが生まれ,学会の行事や運営もオンラインとなることが多くなってきました.

一方,コロナの存在とは関係なく,研究成果の「出版」もスピードアップ・多様化・複雑化しています.データペーパーや,意見論文のような従来なかったようなカテゴリーの論文も出版されるようになってきました.

本年度は2017年に当学会が法人化されてから6年目に入ります.実は,法人化されてからほどなくコロナ禍に入ってしまったため,いまだに学会の運営に関わるルーチン部分というのは完全には定着していない状況に思います.コロナ禍では,通常とは異なる運営が求められてきました.しかし,世の中はもはやコロナ禍ではなく,コロナ共存にシフトしています.菌学会の法人としての運営もようやく定着してきたという感があります.コロナは「共存」とはいえ,依然として避けるべきリスクであります.私自身も昨年の年末コロナに感染し,数日を無駄にしてしまいました.しかし,COVID-19は以前のような脅威ではなくなってきています.学会もウィズコロナの時代に向けて,何が求められているのか,改めて見直し,新しい体制に適応することが必要であると考えられます.

伝統ある日本菌学会が新しい時代・新しい環境に適応し,発展できるよう,微力ながら精一杯務めさせていただきます.

2023年5月