第21回 菌学シンポジウム報告
「菌類の市民権向上を考える」

日時: 2006年12月9日(土) 13:00~17:20   
場所: 東京農業大学 世田谷キャンパス グリーンアカデミーホール

プログラム(敬称略)

12:30 - 12:35
日本菌学会関東支部会長あいさつ
 奥田 徹(玉川大学)
特別講演 司会  奥田 徹(玉川大学)
12:35 - 13:20
Exploration of fungal biodiversity and their sustainable application, a Taiwanese'sExperience  S. S. Tszen 教授
シンポジウム 座長
 細矢 剛 ((独)国立科学博物館)
13:20 - 14:00 きのこ写真の魅力
 大作 晃一 (バック写真家)
14:00 - 14:40

菌類: 「情報発信」から「サイエンスコミュニケーション」へ

 亀井 修 ((独)国立科学博物館)
14:40 - 15:20
「中学教科書で登場する菌類は11行だけ!」 - 中学校・高校の立場から -  中村 雅浩 (成城学園高)
15:20 - 15:40 コーヒーブレーク
  座長  中桐 昭(製品評価技術基盤機構 NBRC)
15:40 - 16:20 大学における菌学教育 - 基礎と専門 -  山岡 裕一 (筑波大学)
16:20 - 17:00
「菌類の市民権向上を考える」 - 学会活動の視点から -  鈴木 彰 (千葉大学)
17:00 - 17:20
パネルディスカッション  全員
17:30 - 19:30 懇親会(1F レストラン)  

[特別講演] Tzean先生は、岡山大学に滞在中の台湾の菌学者で、Aspergillus, Penicilliumほか、enthomopathogenic fungiなどを専門とされています。来日中に本シンポジウムが開催されることが分かったため、当支部の依頼により講演をされました。講演内容は、ご自身の研究テーマの最先端を紹介で、不完全菌類から担子菌におよぶ幅広い応用研究について語られました。

[シンポジウム] 菌類はどちらかといえばよくないイメージでとらえられることが多く、人間の生活にも深く関係した生物であるにも関わらず、地味で存在感がありません。初等・中等の学校教育で扱われないばかりでなく、大学などの専門教育でも扱われていない傾向があり、社会的に十分認知されているとはいません。これは関東支部をはじめとする菌学会および関連学会でも憂うべき状態であるといえます。

 一方、親学会である日本菌学会でも学会の社会へのアピールの重要性が認識され、一般向けの講演会や教育普及担当の理事が置かれるなど、社会へのアピールに向けてとりくみが開始されています。現在、関係者をあげての意識の向上が必要となっているということができます。そこで、菌類の市民権をいかに向上させるべきか、についてのご提言をいただき、学会や学会支部としてどう取り組むべきかを考えるシンポジウムを企画しました。

 大作先生からは、多数のきのこ写真撮影の秘技の詳細を公開していただき、テクニックを中心に、きのこのどんなところを、どのように撮影するか、撮影時のエピソードを交えながら、具体的な話が飛び出しました。また、撮影のための専用車中での作業の動画による紹介や、お得意とされる、白バック写真とその実物のポスターが掲示されるなどして、盛り上がりました。

 亀井先生は、博物館という立場から、菌類や菌学のような、マイナーあるいは高度に専門的な知識が必要とされる分野を一般へ情報発信することの重要性や、どのように情報発信するか、という観点から設けられた「サイエンスコミュニケーター」という資格についてお話しになりました。

 中村先生は中学・高校教科書での菌類の取り扱いが、現在いかに少なくなっているかということについて講演され、過去の教科書と比較してその変化の理由を考察されました。教科内容の現代化、単純化によって、「五界説」によって立場が確立されるはずの菌類が、どこでどう教えるか、という疑問をもたれたまま、結局消失していったと考察されました。

 筑波大学の山岡先生は大学(生物学類)でのご経験に基づき、実習で「菌類」を取り扱うことの困難さ、しかしその困難を越えてカリキュラムに取り入れることの意義について講演されました。

 最後には現在の親学会の会長でもある鈴木先生、学会活動の視点から教育普及活動の重要性や学会での取り組みについての期待やお考えお話しいただきました。

 シンポジウムの最後にはパネルディスカッションが行われ、会場からも引き続き質問や意見が飛び出しました。

[パネルディスカッションの主な意見]
• 菌類を社会にアピールするために、視覚化できる物があると非常によいのでは(たとえば、糞生菌など、制約がなければ工夫はあるはず)
• 大学の生物実験:カリキュラムが決まっているので、時間に制約がある。学部低学年の実験となると、週をまたぐ実験や定時に終了しない実験・実習が批判される。菌類を扱う実験は培養を伴うものがあり、実施が困難。
• 大学における菌学研究が安定して継続できるか。
• 文科省の規制は厳しくなっている、何故か??教育指導要項は誰が決めているのか?
• 教育現場で(上に対して)もっと主張、アピールがあっても良いのでは。
• (こどもの)知識が足りないことを訴えるとよいのでは→技術の体系を伝授するのだけが教育ではない。知識の基礎として覚えるべき基礎知識があるはず。菌類を含む生物も基本は覚えるべき事項に入っている。

シンポジウム担当 細矢 剛

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