第27回 菌学シンポジウム報告 
「菌類と放射能の関係を探る」

日時: 2012年12月8日(土) 13:30-17:30   
場所: 学校法人北里研究所 本館2階 大会議室
参加人数: 71名

プログラム(敬称略)

13:30 - 13:40 日本菌学会関東支部会長 挨拶
 小川 吉夫 (日本大学 薬学部)
13:40 - 14:20 放射線とその影響について
 野村 貴美 (東京大学大学院工学系研究科)
14:20 - 15:00 放射性セシウム濃度測定の実際
 桧垣 正吾 (東京大学アイソトープ総合センター)
15:00 - 15:40
富士山の野生きのこに含まれる放射性セシウムの濃度 -2011年3月10日以前を中心に-  柴田 尚 (山梨県森林総合研究所)
15:40 - 16:00
---コーヒーブレイク---  
16:00 - 16:40 地衣類は高濃度の放射性物質を蓄積しているのか?  大村 嘉人 (国立科学博物館植物研究部)
16:40 - 17:20 森林環境における放射性セシウムの動態と昆虫への移行
 石井 弓美子 (国立環境研究所)
17:20 - 17:30 閉会挨拶
 
17:30 - 19:40 懇親会 (北里本館学生食堂)  

  2012年12月8日(土)学校法人北里研究所にて、第27回シンポジウム「菌類と放射能の関係を探る」を開催しました。昨年に続く北里大学での開催ということでしたが、多くの方々に参加いただき、盛況のうち無事に終了することができました。

 きのこや地衣類といった菌類は、他の生物に比べて高い放射能濃度を示すと言われています。しかし、放射能に関する基本的な知識の欠如から、全ての菌類が危険であるという間違った認識が広がっているようにも感じます。今回のシンポジウムはこのように、普段菌学関係者にとって触れる機会は少ないが、無関係ではいられない放射能問題について、各演者に紹介していただきました。

 野村貴美氏(東京大学大学院工学系研究科)には「放射線とその影響について」という演題で、放射能の基礎知識についてご講演いただきました。世界には自然状態で放射能濃度の高い地域が数多く存在すること、低濃度放射線による人間への影響には確定的な証拠がないことなどは、だれもが知っておくべきことでしょう。

 桧垣正吾氏(東京大学アイソトープ総合センター)は「放射性セシウム濃度測定の実際」という演題で、放射能測定の理論や測定に際して気を付けるべきポイントについて報告されました。だれもが試料を持ちこみ測定できる現在、数字をそのまま鵜呑みにするのではなく、十分な知識を持ち活用することが大切です。

 柴田尚氏(山梨県森林総合研究所)は「富士山の野生きのこに含まれる放射性セシウムの濃度-2011年3月10日以前を中心に-」という演題で、日本では数少ない、チェルノブイリ事故以後の長期モニタリングデータについて発表されました。このようなデータは今になって取れるものではなく、今回の福島事故以降のデータも引き続き蓄積していく大切さを示唆していると言えるでしょう。

 大村嘉人氏(国立科学博物館植物研究部)は「地衣類は高濃度の放射性物質を蓄積しているのか?」という演題で、菌類と藻類の共生体である地衣類と放射能にまつわる事例を紹介されました。地衣類の実体を知ることで、放射性物質をトラップしやすい生態を示していただいた他、単位重量あたりの放射性物質の濃度と実際の生態を正しく知ることで、地衣類を無用に怖がる必要はないことも示していただきました。

 石井弓美子氏(国立環境研究所)は「森林環境における放射性セシウムの動態と昆虫への移行」という演題で、菌類と同様に非常に高い多様性を示す昆虫と放射能の関係について講演されました。森林において菌類と関係を持っている昆虫も多く、今後は食性の違いによって全く異なるセシウムの動向が明らかになることが予想されます。

 シンポジウムでは各講演者に対して多くの質問が投げかけられ、活発な議論がおこなわれました。引き続き講師も交えて行われた懇親会でも、さまざまな質問が飛び交い、交流も深まりました。参加された全員にとって意義深いシンポジウムなったのではないかと思います。講師のみなさま、および参加者の皆様に感謝申し上げます。

シンポジウム担当幹事 保坂健太郎

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