第29回 菌学シンポジウム報告 
「菌類系統のギャップを埋める~新しい系統群と未検討の分類群~」

日時: 2014年12月6日(土) 13:00-17:00
場所: 東京農業大学世田谷キャンパス 1号館132教室
参加人数: 73名

 2014年12月6日(土)東京農業大学にて、第29回シンポジウム「菌類系統のギャップを埋める~新しい系統群と未検討の分類群~」を開催しました。

 ここ10年ほどで、菌類のDNAデータに基づく系統解析の研究からは目覚ましい成果が得られています。当初はリボソーム遺伝子のみに基づく系統樹を中心に議論が進みましたが、複数遺伝子を同時に解析する手法が主流となり、ついに全ゲノムデータによる大規模解析が手の届くところまできました。しかし菌類の多様性は非常に高く、まだまだ全菌類を網羅した系統が明らかになるまでには膨大な時間がかかることでしょう。

 今回のシンポジウムでは、アメリカから2名の演者を招待いたしました。一人はDavid Hibbett博士(Clark University)で、これまできのこを中心とする担子菌類の系統、生態、多様性の研究で数多くの成果を発表しています。もう一人はTimothy James博士(University of Michigan)で、いわゆる下等菌類と呼ばれることもある接合菌類・ツボカビ類の系統解析をはじめ、全菌類の大規模系統解析でも中心的な役割を果たして来ました。まずこのお二人に英語の講演をしていただき、活発な討論がなされました。

 後半の部は日本語で、国立科学博物館の木下晃彦さん、谷亀高広さんおよび若い大学院生の方々に系統や生態などのホットな話題を提供していただきました。今回のシンポジウムでは、外国人の参加者も多くいることが予想されたため、発表スライドは英語・日本語を併記してもらい、そのため会場全体で議論を共有できたと感じます。

 シンポジウムに引き続き、演者を交えて行われた懇親会でも、さまざまな質問が飛び交い、交流も深まりました。参加された全員にとって意義深いシンポジウムなったのではないかと思います。講師のみなさま、および参加者の皆様に感謝申し上げます。

シンポジウム担当幹事 保坂健太郎