第31回 菌学シンポジウム報告 
「日本菌学会関東支部と菌学研究のこれまで~これから」

日時: 2016年12月10日(土) 13:30-17:15
場所: 北里大学白金キャンパス 北里生命科学研究所 211・212講義室
参加人数: 38名

 2016年12月10日(土)北里大学にて、第31回シンポジウム『日本菌学会関東支部と菌学研究のこれまで~これから』を開催しました。

 日本では各種学会が法人化の課題に直面しており、日本菌学会も例外ではありません。その支部として存在し、設立が1987年と歴史ある日本菌学会関東支部の将来はどうなるのか、そしてどう進めていくべきか、ぜひ関東支部の会長以下役員一同だけでなく、シンポジウムに参加するみなさんとともに考えていきたいと思い、本シンポジウムを企画しました。

 今回は基調講演として、日本菌学会関東支部の設立に深く関わった奥田徹先生に、設立の経緯、当時活躍していた菌学者、支部の歴史などを紹介していただきました。「親学会」には無い関東支部ならではの良さを今後も全面的に出していけばよい、という提言は、まさに我々の進むべき道を示していると思います。

 糟谷大河氏には、関東支部およびその他の団体の菌類観察会の紹介を通じて、そのようなイベントの意義、標本を採り続ける大切さを示していただきました。

 出川洋介氏には、関東支部の菌学ワークショップの紹介を通じて、今後このようなワークショップの存在意義について提言をいただきました。DNA解析が主流になってきた現在、これまでのやり方にとらわれない、という考えの一方、菌類の全科・目ごとのワークショップをシリーズ化するような案を提示されました。

 折原貴道氏には、最近新たに立ち上がった菌学関連の団体である、日本地下生菌研究会の紹介をしていただきました。関東支部同様、少数のメンバーから始まった団体ですが、プロ・アマ連携を深めて将来的に学術誌を発行する展望を語っていただきました。

 廣岡裕吏氏には、アメリカ、カナダでポスドクとして過ごした経験をもとに、菌学を進めるうえでも様々な国をまたいだ異分野交流が必要になってきていることや、日本を拠点としてそのような活動をしていくことの強みや弱みについてご講演いただきました。

 井上哲氏には、菌学の拠点のひとつとして世界的に有名な、アメリカのコーネル大学に大学院生として留学した経験をもとに、菌学を学ぶうえでの日本とアメリカの教育システムの違いについて紹介いただきました。

 当初の予定では、演者のみなさまと現関東支部幹事の数名をパネラーとして、関東支部の今後についてのパネルディスカッションを企画しておりましたが、全体の進行に時間がかかってしまい、通常の質疑応答だけになってしまったのが担当幹事として心残りです。ただ、シンポジウムおよびそれに引き続く懇親会にて、様々な交流が生まれました。関東支部の設立時を知る先生方からは、関東支部の今後についての貴重なご助言をいただきましたし、今後海外で菌学を学ぶ機会を探している学生・若手研究者にとっても充実した交流となったのではないかと思います。講師のみなさま、および参加者の皆様に感謝申し上げます。

シンポジウム担当幹事 保坂健太郎