第34回 菌学シンポジウム報告

日時: 2019年12月14日(土) 13:30-17:15
場所: 北里大学白金キャンパス 北里生命科学研究所 211・212講義室
参加人数: 41名

 2019年12月14日(土)北里大学にて、第34回シンポジウム『文化・文学ときのこの深~い関係』を開催しました。

 今回はきのこと人間の文化および文学に関する書籍の出版に関わってこられた計4名の演者をお招きして、書籍出版までの経緯やご自身ときのことの関わりなどについて、様々なエピソードを交えて話題提供をいただきました。演者および講演内容の概要は以下の通りです。

1.根田仁(農研機構生研支援センター/国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所フェロー)
「きのこと日本人」
きのこ、特にマツタケやシイタケなど日本人になじみ深いきのこについて、歴史的な書物や収穫量・生産量などの統計とともに紹介していただきました。多くの方は、シイタケは昔から日本人に利用されていた、と漠然と考えていると思いますが、日本でシイタケが初めて文献に登場するのは1237 年、という事実は非常に興味深いものでした。

2.赤嶺 淳(一橋大学大学院社会学研究科・教授)
「マツタケ熱にほだされて:『マツタケ』(アナ・チン著)翻訳の舞台裏」
赤嶺先生の研究室HPを見ると、専門は「東南アジア研究、海域世界論、食生活誌学、フィールドワーク教育論」となっています。これまできのこには全く関わってこなかった、とのことですが、2019年に出版された『マツタケ–不確定な時代を生きる術』(みすず書房)の翻訳を担当された、ということに興味を覚え、シンポジウムにお誘いしたところ、講演をご快諾いただきました。今回の講演では、特に海外(アメリカ西海岸や中国雲南省)におけるマツタケ熱について語っていただきました。マツタケはもはや日本人だけのきのこではなくなったという印象が強く残りました。

3.枇谷玲子・中村冬美(北欧語書籍翻訳者の会)
「きのこのなぐさめ~悲しみを癒す文学~」
演者のお二方はいずれも北欧語(デンマーク語、スウェーデン語など)のプロの翻訳家で、やはりきのこの専門家ではありません。そのお二人が担当された書籍「きのこのなぐさめ」(2019年・みすず書房)を目にしたとき、翻訳者の視点からきのこの作品がどのように感じられたのか、ということをお聞きしたいと思い、シンポジウムに招待させていただきました。お二人とも菌学会はもちろんのこと、いわゆる学術的な学会という集まり自体が得体の知れないものであったことは間違いなく、その中で講演を引き受けていただいたことに深く感謝いたします。発表内容もこちらが意図していた通り、菌学関係者とは一線を画するもので、参加者の多くにとって非常に新鮮に感じられたのではないでしょうか。

 招待演者4名による講演の後には、会員からの一般講演3題、スライドショー5題のプレゼンがあり、活発に質疑応答がされました。また、それに引き続く情報交換会(懇親会)においては、招待演者を含む多数のみなさまに参加いただき、異分野交流が盛んに行なわれたように感じます。これを機に、菌学を中心として、さらなる異分野交流が生まれてくれば、と期待しています。

 貴重な講演をしていただいた演者のみなさま、学会に参加していただいたみなさま、そして会場における準備・運営全般にご尽力いただいた北里大学のスタッフ一同に深く感謝申し上げます。

シンポジウム担当幹事 保坂健太郎