第29回 ワークショップ報告 接合菌類の多様性

日時: 2015年6月18日(木)~6月20日(土)
場所: 筑波大学菅平高原実験センター(長野県)
講師: 出川 洋介 先生 (筑波大学菅平高原実験センター)

 本年度の菌学ワークショップは筑波大学の出川洋介氏を講師として、6月18日から20日に筑波大学菅平高原実験センターにて開催されました。

 初日は、集合してセンターの利用説明などガイダンスを受けた後、若干、雲行きが心配だったため、予定を変更して、まず初めに、フィールドに出て接合菌類を探しに行きました。霧が立ち込めて、ひんやりとした森林を歩きながら、野外で直接、接合菌を探しました。草にとまったまま死んでいるハエや、樹皮に引っ掛かったまま死んでいるエゾハルゼミの体には、ハエカビ目、ハエカビ属の昆虫寄生菌2種が採集されました。エゾハルゼミに発生するハエカビ属菌は未記載種で、体内にぎっしりと詰まった球形で褐色、厚壁接合胞子が印象的でした。また、信州大学の山本航平さん、東京農工大学の高島勇介さん、筑波大学の瀬戸健介さんら大学院生諸氏は、アカマツ林の地表の倒木上に発生したアツギケカビ目のSphaerocreas pubescens の直径数ミリの胞子果を採集してくれて、発見のコツを教えてくれました。ハラタケ目の子実体に生えるケカビ目菌の、フタマタケカビ属やタケハリカビ属はかなり頑張って探したにも拘らず残念ながら発見できませんでしたが、いろいろな成果を得て実験室に戻り、接合菌類全体に関する概説を聞きました。

 翌日、19日は朝から、特にケカビ亜門ケカビ目の多様な科の各属について、無性生殖ステージの胞子嚢の多様な形態と、有性生殖ステージの接合胞子の特徴を中心に、具体例についての解説を受けた後、シャーレに予め培養された材料を用いて、顕微鏡観察を進めました。ケカビ目については合計13科29属の材料を観察しました。時間切れで観察しきれなかった材料については参加者がお互いのプレパラートを交換するなどして、協力しながら顕微鏡に向かいました。参加者の杉本泉さんからは、顕微鏡下での接合菌類の姿は何とも言えず美しい!という賛嘆のお声を頂きました。

 19日の午後から20日に掛けては、ケカビ亜門に加え、ハエカビ亜門、キクセラ亜門、トリモチカビ亜門の材料も観察しました。キクセラ亜門については昆虫腸内生菌類がご専門の佐藤大樹さんからハルペラ目について、トリモチカビ亜門については研究を進めておられる渡辺舞さんからのお話を伺うこともできました。

 皆さん、これだけ集中して顕微鏡に向かい、接合菌類観察に没頭した経験は初めてだったかもしれません。最後に、ワークショップの成果として、参加者全員で、ツガイケカビ (Zygorhynchus) 属の接合胞子を身体で表現しながら、記念撮影をして、盛況の裡に解散となりました。ご参加いただいた皆さん、遠路駆けつけて下さった小野会長、準備を手伝って下さった学生の皆さん+渡辺さん、大変お疲れ様でした。

 来年は、ワークショップ開催30回を記念して、海外から講師を招いて、糸状不完全菌類のVerticillium 属の分類同定に関するワークショップを企画したいと考えております。多くの方々のご参加を期待しております。

担当幹事 出川 洋介

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