樹病

菌学関係の書評

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更新日 2018-03-28 | 作成日 2007-09-15

胞子

樹木病害デジタル図鑑

(独)森林総合研究所 森林微生物研究領域 編集,全国森林病虫獣害防除協会,2009年,CD版,3,000円(消費税込,送料別)


  この図鑑は,森林総合研究所や他の研究機関などに所属する42名の研究者が執筆を分担し,緑化樹や造林木の主要な304病害について,各病害1~4枚のカラー写真と解説文を1枚のCDに収納したものである.

  デジタル図鑑のCDをパソコンのCDドライブに挿入するとWebブラウザ(インターネット閲覧ソフト)が立ち上がり,最初の画面が表示される.その画面で「一覧から探す」または「キーワードから探す」のいずれかを選択する.「一覧から探す」を選択すると,針葉樹・広葉樹の順に,宿主ごとに病名がまとめられた一覧表が表示される.私は,新しいきのこ図鑑や病害図鑑を見つけると,自分が研究しているナラタケやならたけ病を最初に見てしまう.この一覧表から「ヒノキならたけ病」をクリックすると,病名とその英名,宿主の和名と学名,被害部位,病原体の和名と学名,症状の簡潔な記述があり,その下に病徴(黄変する樹冠)や標徴(菌糸膜,子実体)の写真が表示される.さらに各写真をクリックすると拡大表示されて,細部を鮮明に見ることができる.また,ブラウザの文字や画面の表示倍率の設定によって,文字や画像の大きさを変えることもできる.

  最初の画面から「キーワードから探す」を選択すると,図鑑中に記述されている語句や文からキーワード検索をすることができる.宿主名や被害部位,症状などを入力して検索すると,該当する病名のリストが表示されるなど,検索機能を上手に利用することでとても便利な図鑑になる.この図鑑では,多犯性の病害については代表的な宿主名のみが掲載されているため,上記の「一覧から探す」からでは目的とする樹種の病害を見つけられない場合がある.しかし,各病害のページ中には一覧表に掲載されていない樹種の記載もあるため,キーワード検索機能を使えば目的の病害を見つけられる場合がある.

  これまで,樹木病害の図鑑としては,「植物病害大辞典」(岸國平編)や「庭木・花木・林木の病害」(小林享夫編著)などが出版されている.このデジタル図鑑は,それらと比べると掲載されている病害数は少ないものの,検索機能がある上に,掲載されている写真は897枚と多く,しかも価格が手頃であるなど,とても役立つものである.病原菌の写真があまり多くないため,物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれないが,樹木病害の専門家だけではなく,身の回りの樹木に発生した病気を調べてみたい方にも手軽に使える図鑑である.

(評者 松下 範久

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