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菌学関係の書評

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更新日 2018-03-28 | 作成日 2007-09-15

胞子

野外で探す微生物の不思議 カビ図鑑

細矢剛・出川陽介・勝本兼(著)2010年 全国農村教育協会 ISBN978-4-88137-153-4 160pp


  本書全体を通じて,カビを身近に感じてもらおうという著者と写真担当者の意気込みが伝わってくる.先ず,身近なところでミカンがかびて行く様子からカビの世界の扉が開けられ,多くの写真と詳しい解説によりカビを野外で探すための手引きが示される.生態写真で特徴を示し,見つかる季節と見つけ方が記述される.見つけやすさにはランクが付けられ,見つけた時に達成感が得られるようになっている.この辺は著者らの博物館への勤務経験から来ているのだろう.さらに,自分でカビを捕まえる作戦が示され,カビと深くつきあうためには,顕微鏡観察して記録をとること,そして標本を残すことの意義が述べられる.最後に,菌類への深い理解を目指すためには,菌類の事を面白い,美しいと感じられるきっかけが必要であり,この本がその入り口になればという事で締めくくられている.

  この本は,小学生高学年以上であれば,大学生でも十分に使える.筆者もまだ見たことのない菌類があり,菌類の研究者が読んでも十分に役立つ.また,きのこの図鑑と異なり,見た目がカビとして認識される物を対象にしている為,子嚢菌,不完全菌,接合菌,卵菌,きのこの形を作らない担子菌にまで,分類の大きく異なる菌類が,強弱無く並んでいるのが特徴である.通常図鑑は分類に重きを置くが,この本は,入門編として,見つけやすさ,生態の面白さに焦点をあてて編集してある.先ず見つけて,それが何に属するかを知る.この方が,読者がとりつきやすいと思われる.もう一つの特徴は,カビの写真撮影について詳しく記述されていることである.顕微鏡の接眼レンズにデジカメを押しつけるだけで写真が撮れることの他,葉上の病班をはっきり撮影するための光の当て方に対する解説は,プロのカメラマンだからできることである.

  来年の夏休みには,カビの自由研究がたくさん行われ,菌類の市民権が向上することを期待したい.

(評者 佐藤 大樹)

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