菌学関係の書評

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更新日 2018-03-28 | 作成日 2007-09-15

胞子

ポピュラー・サイエンス257 きのこアラカルト

福岡 久雄 著 四六判 138頁 裳華房 2003年発行 定価1,600円+税 ISBN 4-7853-8757-2


  裳華房のポピュラー・サイエンスシリーズとして新たにキノコの本が出版された.この本は以下の7章から構成されている.第1章 華麗なキノコたち,第2章 キノコの食卓へようこそ,第3章 キノコ狩りの主役,第4章 毒キノコと中毒,第5章 変わり者のキノコ,第6章 都心にも生えるキノコ,第7章 キノコアラカルト.菌類の分類学,生態学といった難しい話が中心ではなく,著者が長年に渉り親しんできた山のキノコや都会でも見られる身近なキノコのこと,キノコ狩りのこと, それにまつわる様々な体験談や収集した様々な情報がまとめられている.キノコというと,茶色っぽくてじめじめしたところに生えていて何となく気持ちが悪いと思っている方や,食べられるキノコにしか興味がない方も世の中にはずいぶんいらっしゃるかと思う.この本では, キノコの魅力,不思議さ,キノコ狩りの楽しさが,著者の体験談を通して紹介されており,私のようなキノコの専門外の者でも,この本を読んで自分でキノコ狩りに行ってみたくなった.

  毒キノコと中毒に関しては特に詳しい情報が載せられている.それぞれの毒キノコが含有する毒成分の種類とその作用,具体的な中毒症状が記されている.また,代表的な毒キノコの見分け方についても丁寧に解説されている.さらに,自らのキノコ中毒体験談も含めた中毒症例についても大変詳しく書かれており,これは非常に貴重な情報である.もちろん,そのような体験を味わう方が二度と出ないことを望むが.

  現在キノコやキノコ狩りに熱中されている方々に読んでいただければ,おそらくこの本の中のそこかしこに共感できる記述があることだろう.しかしそれだけではなく,キノコの生態,利用,美味しい食べ方に至るまで,キノコやキノコ狩りに関する様々な情報を入手することができ,きのこに関する知識をより充実させることができることと思う.次のキノコ狩りにはまた一味違ったキノコの楽しみ方ができるのでは.

  この本は,ポピュラー・サイエンスシリーズの1冊であるため,肩が凝らずに読めるよう,平易に解説されている.今まであまりキノコに興味を持っていなかった方々も含め,様々な方にこの本を読んでいただきたい.キノコに,菌学に興味を持っていただける方を増やすことに大きく貢献してくれる1冊だと期待する.

(評者 山岡 裕一)

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